親しみやすさを重視した表現と、説明を目的とした表現では、伝わる情報が異なります。
魚をテーマにした広報物や啓発資料では、
親しみやすさや分かりやすさが重視されることが多くあります。
その結果、
「かわいい魚イラスト」が選ばれる場面も少なくありません。
しかし、説明や啓発を目的とする場合、
表現が親しみやすいことと、正しく伝わることは同じではありません。
本記事では、
魚の保全・地域資源・公共広報の文脈において、
なぜ“かわいさ重視のイラスト”が誤解を生むことがあるのかを整理します。
啓発や説明で求められるのは「印象」ではなく「理解」
広報や啓発の目的は、
見た人に良い印象を持ってもらうことではなく、
内容を正しく理解してもらうことです。
特に魚を扱う場合、
-
在来種と外来種の違い
-
似た種との見分け方
-
生態や特徴の要点
といった情報は、
曖昧に伝わること自体が問題になります。
ここで、
形や特徴が簡略化されすぎたイラストを使うと、
意図しない誤解を生む可能性があります。
「かわいい表現」が引き起こしやすい誤解
親しみやすさを優先した表現では、
次のようなことが起こりがちです。
-
種の違いが分からなくなる
-
実際の姿とかけ離れた印象を与える
-
特徴よりも表情や装飾が記憶に残る
結果として、
「どの魚なのか分からない」
「実物を見たときに一致しない」
といった状態が生まれます。
これは、
伝えたかった内容が伝わっていない
ということでもあります。
正確さは「専門的に見せること」ではない
説明に必要な特徴だけを整理して示すことで、誤解を避けることができます。
保全や広報で正確さが求められるというと、
専門的すぎる、堅い表現を想像されるかもしれません。
しかし、ここでいう正確さとは、
-
必要な特徴が省略されていない
-
誤解につながる強調がされていない
-
見る人が正しく判断できる
という意味です。
難しい表現にすることではなく、
意味が伝わる形に整理することが重要になります。
説明や啓発でイラストが果たす役割
説明や啓発の場面で、
イラストには写真とは異なる役割があります。
それは、
-
見るポイントを示す
-
情報を整理して提示する
-
誤解を避ける構造を作る
という役割です。
写真は実物をそのまま伝えますが、
イラストは
「何を理解してほしいか」を設計できる
という強みがあります。
判断を整理した表現が、説明責任を支える
自治体や団体の広報では、
「なぜこの表現を使ったのか」
と問われる場面があります。
その際、
-
どの特徴を基準にしたか
-
なぜこの形で表現したか
を説明できることは、
説明責任を果たすうえで重要です。
正確さを意識して整理されたイラストは、
そのまま
表現選択の根拠になります。
まとめ
啓発や広報において、
親しみやすさは確かに大切です。
しかし、
伝えるべき内容が正しく伝わらなければ、
啓発としての役割は果たせません。
魚を扱う場面では、
「かわいいかどうか」ではなく、
「意味が伝わるかどうか」を基準に
イラストを選ぶ必要があります。
もし
「この表現で誤解は生まれないか」
「説明として成立しているか」
と感じた場合は、
制作段階で判断を整理するという考え方もあります。
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作者プロフィール
大学では生物環境を専攻し、水産振興センターの指導のもと、小河川に生息する魚類の生態を一年間にわたり調査しました。
フィールド調査、採集記録、標本作成などの経験を通して、形態学的な視点から魚類の特徴や分類への理解を深めました。 実際のフィールドで観察した魚たちのダイナミックな姿や生命感に触れた経験が、現在の魚類図版制作の原点になっています。
また過去には、形成外科分野の研究論文における施術解説図(医学図版:シェーマ)の制作を担当し、図版が使用された論文は形成外科分野の
⚪︎PRS Global Open
⚪︎JPRAS Open
⚪︎European Journal of Plastic Surgery
などの国際学術誌に掲載されています。
研究内容を正確に伝えるための図版設計や、専門家との共同制作の経験を通じて、科学図版に求められる精度と情報整理の重要性を学びました。
現在は、こうした経験を基に
⚪︎魚類の形態的特徴
⚪︎種の識別ポイント
⚪︎生態的背景
を踏まえながら、正確さと分かりやすさを両立した魚類図版の設計・制作を行っています。