クロヨシノボリ Rhinogobius brunneus の雄を側面観で示した単体魚類図版です。頭部から尾鰭までの体型、各鰭の位置と形状、鱗被、胸鰭基部や尾鰭に現れる色彩・斑紋など、種を特徴づける外部形態を整理しています。本図版はクロヨシノボリ雄の形態を単体で理解するとともに、雌雄比較や他のヨシノボリ類との種間比較へ展開するための基礎図版として制作しています。
クロヨシノボリ♂の魚類図版
Illustration of the kuroyoshinobori♂
Fig. 1. クロヨシノボリ Rhinogobius brunneus 雄の側面図。
第1・第2背鰭、胸鰭基部の橙色斑、尾鰭の斑紋など、雄の外部形態を示す。
Illustration © Fish Illustration Archive
基本情報
和名: クロヨシノボリ
学名: Rhinogobius brunneus (Temminck & Schlegel, 1845)
分類: ハゼ科 Gobiidae/ヨシノボリ属 Rhinogobius
図版対象: 雄
図版形式: 単体魚類図版/側面観
クロヨシノボリは日本および韓国から記録されているヨシノボリ属魚類です。2026年の報告では、日本国内では本州の秋田県・千葉県以南、四国、九州および周辺島嶼からの分布が整理され、新たに伊豆諸島八丈島の標本に基づく記録が報告されています。
海域を介して河川間を移動する両側回遊性をもち、2026年の八丈島からの報告でも amphidromous species として扱われています。
図版制作の意図
本図版では、クロヨシノボリ雄の外部形態を、一個体の側面観として把握できる形に整理しています。
特に、頭部と体幹部のプロポーション、第1・第2背鰭の形状、胸鰭基部、体表の鱗、尾柄から尾鰭にかけての斑紋と色彩を、魚体全体の構造との関係が読み取れるよう表現しています。
クロヨシノボリを含むヨシノボリ類では、体色だけでなく、鰭条数、鱗数、鱗被、感覚乳頭の配列、各鰭の斑紋など複数の形質を組み合わせることが重要です。
そのため本図版も、クロヨシノボリの「黒っぽい外観」を表現すること自体を目的とせず、他のヨシノボリ類と同じ側面観で外部形態を記録し、比較可能な基礎図版とすることを目的としています。
外部形態の特徴
図版では、頭部が比較的大きく、そこから尾柄へ向かう細長い体型を側面から確認できます。体幹部の大部分には鱗を配置し、頭部から胸鰭周辺にかけての鱗被の変化も表現しています。
背面には2基の背鰭があり、本図版の雄では第1背鰭を高く展開した状態で描いています。第1背鰭には大きな暗色斑を配置せず、鰭膜にみられる色調と鰭条の構造を区別しています。クロヨシノボリについては「第1背鰭に暗色斑を欠く」ことが診断に用いられる特徴の一つとして報告されています。
胸鰭基部には橙色系の斑紋を表現しています。文献では、胸鰭基部に単一の橙色を帯びた三日月状斑があることが本種の特徴として挙げられています。
尾鰭では、中央部に多数の橙色斑が配列し、ジグザグ状の模様を形成することがクロヨシノボリの特徴として報告されています。図版では尾鰭の鰭条と鰭膜を描き分けながら、この色彩パターンを魚体構造上の位置関係とともに表現しています。
形質診断に用いた情報
近年のクロヨシノボリ標本に基づく報告では、ヨシノボリ属および本種の同定に用いられる形態情報として、次の値・特徴が整理されています。
形質文献で確認される値・特徴第1・第2背鰭VI–I, 7–8臀鰭I, 7–9胸鰭17–22分節軟条腹鰭I, 5縦列鱗数31–35横列鱗数8–10吻・頬・鰓蓋無鱗体部大部分を櫛鱗が覆う頬の感覚乳頭縦列型第1背鰭暗色斑を欠く胸鰭基部単一の橙色系三日月状斑尾鰭中央部橙色斑がジグザグ状の帯を形成
ここで示した計数値は、クロヨシノボリについて文献で確認されている形態情報であり、本図版の個体からすべてを直接計数した値ではありません。
また、色彩や斑紋だけで種を判断するのではなく、計数形質、鱗被、感覚乳頭など複数の形質を組み合わせて判断する必要があります。
図版設計と表現方法
魚体は左向きの側面観とし、吻端から尾鰭後端までを一つの視野で確認できる構成としています。
各鰭は輪郭だけでなく、鰭条と鰭膜を分けて描写しています。第1・第2背鰭、胸鰭、臀鰭、尾鰭については、形状だけでなく色彩・斑紋がどの位置に現れるかを確認できるよう整理しています。
体幹部では一枚ごとの鱗を描き、鱗被と体表色を重ねて表現しています。一方、吻や頬などの頭部については体幹部と同じ鱗表現を適用せず、部位による体表構造の違いが読み取れるようにしています。
背景には環境要素を配置せず、魚体そのものを独立して示しています。これにより、今後制作するクロヨシノボリ雌や他のヨシノボリ類の単体図版と並べた際にも、体型、鰭、鱗被、斑紋を同じ視点から比較できます。
種を特徴づける要素
クロヨシノボリを図版上で理解する際には、暗い体色そのものよりも、複数の形態・斑紋情報の組み合わせを見ることが重要です。
文献では、第1背鰭に暗色斑を欠くこと、胸鰭基部に単一の橙色系三日月状斑をもつこと、尾鰭中央部の橙色斑がジグザグ状の帯を形成することなどが、本種を特徴づける情報として整理されています。また、頬の感覚乳頭が縦列型であることや、鱗数・鰭条数なども識別に関係します。
したがって本図版では、体色の印象だけを強調せず、頭部、鰭、鱗被、胸鰭基部、尾鰭までを一個体の外部形態として統合して表現しています。
想定用途
本図版は、クロヨシノボリ雄の外部形態を示す単体魚類図版として、魚類図鑑・書籍、研究・教育資料、博物館・水族館等の展示解説、Webコンテンツなどでの利用を想定しています。
また、クロヨシノボリ雌との雌雄比較、他のヨシノボリ類との種間比較、Identification PlateやDiagnostic Character Plateを制作する際の基礎図版として利用できます。
まとめ
クロヨシノボリ雄の単体魚類図版では、魚体全体のプロポーション、第1・第2背鰭をはじめとする各鰭の形状、体表の鱗、胸鰭基部や尾鰭に現れる色彩・斑紋を、側面観として整理しています。
特に、第1背鰭に大きな暗色斑を欠くこと、胸鰭基部の橙色系斑紋、尾鰭中央部の斑紋などは、クロヨシノボリを形態的に理解する際に注目すべき情報です。
本図版は雄一個体の描写として完結させるだけでなく、同一条件で制作する雌図版や他種の単体図版と組み合わせることで、ヨシノボリ類の雌雄差・種間差を比較するための基礎図版として位置づけています。
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