本図版は、ケンムンヒラヨシノボリ(Rhinogobius yonezawai)を対象としたDiagnostic Character Plate(DCP)です。
DCPは、種を特徴づける診断形質を一枚の図版に体系的に整理することを目的とした魚類図版フォーマットです。本図版では、魚体の形態だけでなく、識別上重要となる形質、計数形質、分布情報を統合し、分類学的な情報を視覚的に理解できるよう構成しています。
Diagnostic Character Plate(形質診断図版) No.001
ケンムンヒラヨシノボリ Rhinogobius yonezawai ♂ の診断形質図版。
Illustration © Yuki Mukoda / Fish Illustration Archive
A|第1背鰭
雄では第1背鰭が高く発達し、折りたたむと第2背鰭に達する。ヤイマヒラヨシノボリでは第2背鰭に達しないため、成熟した雄の形質として明瞭な判別ポイントとなる。
B|頭部の色彩・斑紋
側頭部から後方へ伸びる2本の橙色線は短く、第2背鰭起部下方部まで達しない。ヤイマヒラヨシノボリではこれらの橙色線が第2背鰭起部下方部まで達するため、両種を比較する際の色彩的特徴となる。
C|尾鰭の斑紋
尾鰭には橙赤色の横帯状の斑紋が認められる。ヤイマヒラヨシノボリでみられる4横点列の橙赤色斑とは異なり、両種を比較する際の尾鰭斑紋の特徴となる。
D|腹鰭第5軟条の分枝
腹鰭第5軟条は通常4分枝。近縁のヤイマヒラヨシノボリでは通常5分枝であり、両種を識別するうえで重要な計数形質となる。
分類学的背景
ケンムンヒラヨシノボリは、2020年に新種として記載された日本固有のヨシノボリ類です。
従来は他種と混同されることもありましたが、Suzuki・渋川・藍澤(2020)により独立種として記載され、胸鰭軟条数や腹鰭の分枝軟条数、体色、各鰭の模様など複数の診断形質によって識別されます。
本図版では、原記載論文に基づき、分類学上重要となる特徴を図版内に整理しています。
図版の内容
本DCPでは、ケンムンヒラヨシノボリを識別するために重要な情報を、一枚の図版へ集約しています。
掲載している主な情報は次のとおりです。
- 全身の標準化した魚類図版
- 診断形質(Diagnostic Characters)
- 腹鰭形態
- 計数形質(Meristics)
- 国内分布図
- 学名・分類体系
- 情報の出典
文章だけでは把握しにくい診断形質を、図版として視覚的に整理することで、分類学的特徴を効率よく理解できます。
制作上のポイント
Fish Illustration Archiveでは、魚体を正確に描写するだけでなく、「分類学的に何が重要な特徴なのか」を図版上で明確に示すことを重視しています。
本図版では、原記載論文をもとに診断形質を選定し、識別に重要な部位へ注記を配置しました。また、計数形質や分布情報を併せて掲載することで、図版単体でも種の特徴を総合的に把握できる構成としています。
診断形質を標準化したレイアウトで整理することにより、今後制作する他種のDCPとの比較にも活用できるよう設計しています。
まとめ
ケンムンヒラヨシノボリ Diagnostic Character Plateは、種の診断形質を体系的に整理した魚類図版です。
魚体の正確な描写に加え、分類学的特徴、計数形質、分布情報を一枚の図版へ統合することで、研究・教育・標本整理・展示解説など、さまざまな場面で活用できる情報媒体として制作しました。
Fish Illustration Archiveでは、本図版を基準として、今後もさまざまな魚種のDiagnostic Character Plateを制作・公開し、魚類の分類学的理解を支える図版アーカイブの構築を目指しています。
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魚種や点数、必要な図版形式がまだ確定していない段階でもご相談いただけます。
制作物の用途や伝えたい内容を確認し、必要な魚類図版の構成から検討します。